実印は人生の重要な契約で必要になる印鑑です。いつ必要?認印との違いは?サイズや書体の選び方は?実印登録の手続きから、材質・価格帯まで、初めて実印を作る方にもわかりやすく解説します。
実印とは、住民登録をしている市区町村の役所に印鑑登録を行い、公的に認められた印鑑のことです。印鑑登録を行うことで「印鑑登録証明書」を発行でき、重要な契約時に本人確認の証明として機能します。
実印は市区町村に登録した印鑑で、不動産取引や自動車登録など法的効力が求められる場面で使用します。最も重要度が高く、厳重な管理が必要です。
銀行印は金融機関での口座開設や各種手続きに使用する印鑑です。実印とは別に用意することで、万が一の紛失時のリスクを分散できます。
認印は日常的な書類の確認や受領印として使用する印鑑です。宅配便の受け取りや社内書類など、法的効力を必要としない場面で活躍します。
印鑑を用途別に使い分けることで、セキュリティを高め、紛失や悪用のリスクを最小限に抑えられます。
実印は日常生活で頻繁に使うものではありませんが、人生の節目や重要な契約で必ず必要になります。
マンションや一戸建ての購入、土地の売買、不動産の相続や贈与など、不動産取引では実印と印鑑登録証明書が必須です。住宅ローンを組む際にも金融機関から実印の提出を求められます。
普通自動車の購入や売却、名義変更の際には実印が必要です。軽自動車の場合は認印で手続きできますが、普通自動車は必ず実印と印鑑証明書を用意しなければなりません。
遺産相続の手続きでは、相続人全員の実印と印鑑証明書が必要になります。遺産分割協議書への押印や、不動産の相続登記、銀行口座の名義変更などで使用します。
保険金の受け取り、公正証書の作成、会社設立時の登記、金銭消費貸借契約など、法的な効力が求められる様々な場面で実印が求められます。
急に必要になって慌てることがないよう、社会人になったタイミングで実印を作成し、印鑑登録を済ませておくことをおすすめします。
実印として使用するには、お住まいの市区町村役所で印鑑登録を行う必要があります。
印鑑登録には一定の規定があります。サイズは一辺の長さが8mm以上25mm以内の正方形に収まるものと定められています。一般的には、男性は15mm〜18mm、女性は13.5mm〜15mmが推奨サイズです。
素材は変形しにくいものが求められます。ゴム印やスタンプ式の印鑑は登録できません。また、氏名や氏、名のいずれかが彫刻されている必要があり、イラストや絵柄のみの印鑑は登録できません。
欠けやすれがある印鑑、印影が不鮮明な印鑑、同一世帯で既に登録されている印鑑と同じものは登録できませんので注意が必要です。
印鑑登録は本人が市区町村役所の窓口で行うのが基本です。本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど)と登録する印鑑を持参します。
即日登録できる場合と、後日郵送される照会書に回答してから登録が完了する場合があり、自治体によって手続きが異なります。登録が完了すると印鑑登録証(カード)が交付され、これを使って印鑑証明書を取得できるようになります。
手数料は自治体により異なりますが、登録料は200円〜500円程度、印鑑証明書の発行は1通200円〜450円程度が一般的です。
実印選びで失敗しないためには、サイズ、書体、素材の3つのポイントを押さえることが重要です。
実印のサイズは、重厚感と押しやすさのバランスを考えて選びます。男性の場合は15mm、16.5mm、18mmが主流で、存在感を重視するなら18mm、扱いやすさを重視するなら15mmがおすすめです。
女性の場合は13.5mm、15mmが一般的です。手の大きさに合わせて選ぶと押印しやすく、美しい印影が得られます。
大きすぎると押印が難しく、小さすぎると実印としての重厚感に欠けるため、推奨サイズの範囲内で選ぶことをおすすめします。
実印には可読性が低く複製されにくい書体が適しています。最も人気があるのは篆書体(てんしょたい)で、古代中国から伝わる格式高い書体です。可読性が低く偽造防止に優れているため、実印に最適とされています。
印相体(いんそうたい)は篆書体をベースに線を太く力強くアレンジした書体で、縁起が良いとされ人気があります。
古印体(こいんたい)は日本で生まれた書体で、柔らかく温かみのある印象を与えます。ただし、やや可読性が高いため、セキュリティ面では篆書体や印相体に劣ります。
実印の素材は耐久性と高級感を基準に選びます。チタンは耐久性に優れ、半永久的に使用できる現代的な素材です。錆びず変形しにくく、メンテナンスが簡単なため、長期使用を考える方に適しています。価格は1万円〜3万円程度です。
黒水牛は艶のある黒色が特徴の天然素材で、実印の定番として長く愛用されています。適度な硬度があり、押印性に優れています。価格は5千円〜1万5千円程度です。
薩摩本柘は国産の木材で、木の温かみを感じられる素材です。比較的安価で入手しやすいですが、耐久性はチタンや水牛に劣るため、定期的なメンテナンスが必要です。価格は3千円〜8千円程度です。
象牙は最高級の印鑑素材として知られていますが、ワシントン条約により流通が制限されており、現在は新規購入が難しくなっています。
長く使い続けることを考えると、耐久性の高いチタンや黒水牛がおすすめです。
実印は一生使い続ける可能性のある重要な印鑑です。作成時には以下の点に注意しましょう。
実印には氏名の彫刻方法にいくつかの選択肢があります。最も一般的なのはフルネーム(姓名)での作成で、セキュリティ面で最も優れています。
名字のみでも登録可能ですが、同姓の家族がいる場合は区別がつきにくくなります。女性の場合、結婚後に姓が変わる可能性を考えて下の名前のみで作成する方もいます。
最もセキュリティが高いのはフルネームですが、ライフスタイルに合わせて選ぶとよいでしょう。
実印は既製品ではなく、オーダーメイドで作成することを強くおすすめします。既製品は同じ印影のものが複数存在する可能性があり、偽造や悪用のリスクが高まります。
手彫りや機械彫りと手仕上げを組み合わせた印鑑は、世界に一つだけの印影となり、セキュリティ面で優れています。
実印は銀行印や認印とは別に保管し、印鑑証明書と一緒に保管しないことが鉄則です。悪用を防ぐため、使用する時だけ取り出し、使用後はすぐに安全な場所にしまいましょう。
印鑑ケースに入れて保管し、落下による破損を防ぐことも大切です。
実印の価格は素材やサイズ、彫刻方法によって大きく異なります。
一般的な価格帯は5千円〜2万円程度です。薩摩本柘などの木材は3千円〜8千円、黒水牛は5千円〜1万5千円、チタンは1万円〜3万円が相場です。
手彫りの場合は職人の技術料が加算されるため、さらに高額になることもあります。一生使うものと考えれば、1万円〜2万円程度の予算で品質の良いものを選ぶことをおすすめします。
実印は専門の印鑑店、百貨店、オンラインショップで購入できます。実店舗では実物を見て素材感を確かめられるメリットがあります。オンラインショップは価格が比較的安く、豊富な種類から選べる利点があります。
納期は即日〜2週間程度と店舗や混雑状況によって異なるため、必要な時期が決まっている場合は早めに注文しましょう。
実印は人生の重要な契約で必要になる印鑑です。不動産取引、自動車登録、相続手続きなど、法的効力が求められる場面で本人確認の証として機能します。
実印を選ぶ際は、適切なサイズ(男性15〜18mm、女性13.5〜15mm)、可読性の低い書体(篆書体や印相体)、耐久性のある素材(チタンや黒水牛)を基準に選びましょう。既製品ではなくオーダーメイドで作成し、他の印鑑とは別に厳重に保管することが大切です。
社会人になったら早めに実印を作成し、印鑑登録を済ませておくと、いざという時に慌てずに済みます。一生使い続けるものだからこそ、じっくりと選んで納得のいく実印を手に入れてください。